なば採り


いつもの散歩道に見かけるさまざまなキノコ。
松葉の間から顔を出して、なんとも愛らしい。
雲仙だけの方言なのだろうか、この季節のキノコ採りを
「なば採り」と言う。
以前は焼物屋仲間とよく一緒になば採りに出かけた。
必殺遊び人の先輩Kさんは焼物、書はもちろん、猟銃は扱うは、犬は詳しいは、
キノコの採集場所の山には彼が連れて行ってくれる。
皆少年のように山を歩き、走り回りたくさんの「なば」を採って、
一杯やりながら鍋にして食べた。
そして一夜明けて、忘れもしない皆の中でいちばん元気に騒いでいたNさんが
お腹をこわしてしまった。一つ二つ毒キノコが入っていたのかもしれない。
いやいや呑み過ぎたにちがいない。
秋深まるこの季節、キノコを見るとあの楽しかった「なば採り」を思い出す。
それから数十年、誰もなば採りに行こうと誘わなくなった。
今年あたり私が皆に声をかけてみよう。