交差する”時”

 駐車場に留めていた車が動かない!
つい数日前も、晴天のドライブ中にワイパーが突然動き出し、
修理をしてもらったばかり。いよいよ車が壊れたかぁ・・・
 でも何とかこの100円パーク駐車場から車を出したいし、
急いで駐車料金の支払機に1000円札を投入するが入らない。
機械が吸い込んでくれない。
隣に駐車していたご夫妻が試してくださるが
コインは入ってもお札は受け付けない。
機械自体が壊れているみたい。
 その上に今日は日曜日でガソリンスタンドまでお休み。
ご一緒していた○○夫人の機転で、目の前のお店に聞き
開いているスタンドを探して男性に来てもらい、
ふ〜車はやっと動き出した。

 まぁこんなに不運が重なる日ってあるのかしら・・・と落胆していたら
「うちの庭を見に寄りません?」と○○婦人のお誘いを頂き、
このポンコツ軽自動車に婦人を乗せてその家に向かった。
それがあっという間に着いて・・・
歩いても3分位の近さなのに、空気が一変した。

 広い石の階段を上がり門をくぐって入ったお屋敷の庭は
手入れされて静かで、眺めていると今日のドタバタ劇は
無かったように頭の中から消えてしまった。

 ここは幕末に茶商で栄えた”大浦 慶"のお屋敷。
あの時代に、長崎から世界を静かに見ていた”大浦 慶”のその家は
町の中に有ってゆったりとした時間の流れている。
○○婦人が今住んでいらしゃるけれど、まるでまだ”お慶さん”が居るような・・・
 幕末の穏やかに流れる時と、次々に事の起こる忙しい今の時が
目の前で交差したような錯覚に陥った。
 ん? 今日の○○婦人は、大浦お慶・・